都合のいいオトコ

そのあと、車で遊園地方面へ向かってるとき。

「ミツルはどういう子が好みなん」

私はそんな質問を口にした。いつかミツルに彼女が出来たら、と考えてしまったから。

「……“好み”?」

「好み」

「……んー」

「やっぱ髪が綺麗な子とか好きやったりするん?」

美容師ならそこはチェックするんかも、とか考えた。

「まぁー、綺麗に越したことはないけど、そこはどうでもいいかな」

「そうなんや」

「頭はちゃんと洗っててほしいけどな」

「……ハイハイ」

マジメに答えてるかと思えば、ちょいちょい皮肉を混じえてくる。

言い返すのも面倒で、そっぽを向くだけにしてたら──

「ホンモノやったら何でもええかな」

ミツルはポツリとそうつぶやいた。

「“ホンモノ”?」

「そう、ホンモノ。……よそ見せんと、ちゃんと1対1でやってくれてたら、外見とかはさほど気にせぇへん」

運転中やから、前を見ながらの言葉。

嫌味な言い方はされてないけど、トゲがあるように感じたのは、私の中に後ろめたさがあったからや。

「……ふうん」

それ以上を聞くのはやめとこと思った。

やめたけど、ちょっとだけ考えてた。ミツルは浮気とかされたことがあるんかな、って。
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