都合のいいオトコ

この話は、そこで終わったと思ってた。

けど、ミツルはいつもの道路で車をとめたあと、タバコをくわえながら聞いてくる。

「マイは堂珍のどこを好きになって付き合うたん?」

「……何、急に」

またマコトの話になってもうた。

ミツルとの関係が悪化するのを避けたくて、返す言葉を考えてると、言葉を付け足される。

「顔も好みちゃうんやろ? でも、聞いてる限り、ええとこないやん」

純粋に、疑問を抱いてるようやった。

私はマコトと出逢った頃を振り返る。

「……親でしんどかったとき、一緒におってくれた」

結局はそこなんやと思う。

なんだかんだ、マコトにもいいところはあるけど、そこじゃなくて、あの時期のマコトとの時間が、自分にとっては大きかったから。

「死にたいとか考えるくらい、つらかってん。マコトに、殺してくれって泣き叫んだりもしたんよ」

「……」

「普通やったら、そんなオンナって嫌やろ。でも、嫌がらんと、毎日一緒におってくれた。……そのあと、向こうはダメ男に豹変したけどな」

それでも、救われたのは事実。

友だちは「依存してるだけやん」と言うてた。確かに、ただの依存なんかもしれん。

でも、マコトを想い続けることを幸せやと感じてしまったんやし。つらいことのほうが多くても、ほんの少しの幸せな時間が、私を元気にしてくれた。
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