都合のいいオトコ
聖夜の着信
クリスマスの夜も、私は店で働いてた。
というても、ハライシさん以外のお客さんはひとりも呼べてなくて、店長を怒らせたからか、新規のお客さんの席には一切つかせてもらえず、ヘルプと上がり待機の繰り返し。
そんな私を見かねてか、
「マイは? ……あ、おった。チエリんとこから指名入ったから、店ん中戻って!」
チエリが、ダブル指名で私を呼ぶよう、お客さんに頼むことが増えてる。
上がり待機になって、非常階段でタバコを吸い始めたタイミングで、ボーイから呼び戻された。
仕方なく、火をつけたばかりのタバコを灰皿に捨ててると──
「はよ辞めたらいいのに」
非常階段におる女の子らのひとりが、ボソッとつぶやいた。
「……」
振り向くと、その子は自分のケータイの画面を隣に座ってる子に見せてる状態で、誰に対しての言葉なんかかわからん振る舞いをしてる。
私はなんも言わんと、店の中へ戻った。