都合のいいオトコ
「一緒にミナミ行こうよ!」
「……」
「源氏名も一緒に変えよ? 私考えてたんよー。ノアとソラって可愛くない? 私がノアで、マイがソラ!」
「……ごめん。ミナミやと、遊園地との両立はきつい」
チエリの言う通り、今の私にとってこの店はめっちゃ居心地の悪い場所やけど。両立のことを考えると、ミナミでの勤務は体が持たへんと思った。
「今みたいに毎日働かんと、たまにミナミで働く感じにしたら? 私がここを辞めてからのことを考えると、マイをひとりにするんは心配やねん」
「……チエリ」
「考えといて。……あ、もう来るみたい。次もダブルで呼んでいい?」
「あー……うん、あとひと席くらいなら」
チエリは親身に私のことを心配してくれてた。
その気持ちが伝わってくる分、深夜2時を超えてからのダブル指名も、私は断りづらくなってて。
チエリがメイクを直しに行ったあと、私はラストまでの勤務を覚悟して、ロッカーの鍵をもらいにいった。
ミツルに連絡するつもりで、ケータイを触ってた。今日は送りの車で帰るから、と連絡しておくために。
けど、通話履歴を開いた瞬間、ケータイを持つ私の表情は凍りつく。1件の不在着信が追加されてたから。
12/26 01:24 (不在)公衆電話