都合のいいオトコ

「一緒にミナミ行こうよ!」

「……」

「源氏名も一緒に変えよ? 私考えてたんよー。ノアとソラって可愛くない? 私がノアで、マイがソラ!」

「……ごめん。ミナミやと、遊園地との両立はきつい」

チエリの言う通り、今の私にとってこの店はめっちゃ居心地の悪い場所やけど。両立のことを考えると、ミナミでの勤務は体が持たへんと思った。

「今みたいに毎日働かんと、たまにミナミで働く感じにしたら? 私がここを辞めてからのことを考えると、マイをひとりにするんは心配やねん」

「……チエリ」

「考えといて。……あ、もう来るみたい。次もダブルで呼んでいい?」

「あー……うん、あとひと席くらいなら」

チエリは親身に私のことを心配してくれてた。

その気持ちが伝わってくる分、深夜2時を超えてからのダブル指名も、私は断りづらくなってて。

チエリがメイクを直しに行ったあと、私はラストまでの勤務を覚悟して、ロッカーの鍵をもらいにいった。

ミツルに連絡するつもりで、ケータイを触ってた。今日は送りの車で帰るから、と連絡しておくために。

けど、通話履歴を開いた瞬間、ケータイを持つ私の表情は凍りつく。1件の不在着信が追加されてたから。



12/26 01:24 (不在)公衆電話

< 118 / 142 >

この作品をシェア

pagetop