都合のいいオトコ

最期のホンネ


──マコトとは、何度も電話のことで喧嘩をしてきた。

最初は電話番号も知ってたけど、別れたことで一度連絡が途切れ、そのあと突然、公衆電話からかかってきて、今はケータイを持ってないと言われた。

会いに来て、よりを戻したいと言われ、悩みながらも元に戻ったけれど、その後、通話履歴に残る名前は──公衆電話か非通知設定のどちらかやった。

当時は「知り合いのケータイやから」と言われ、番号を教えてもらえてなかった。でもメールは普通にできてたから、あれはマコトのケータイやったんやと思う。

多分、私が電話に出ないことでマコトを疑ったり、怒ったり、すねたりするのが面倒くさかったんやろう。

ウソをつかれてるってわかってたけど、私はそこを追求するのをやめた。またケンカになって、連絡がとれなくなるのが怖かったから。

連絡帳に登録してるのは、今はもう存在しないいちばん最初の電話番号。生きてるのはメールアドレスだけ。

別れるくらいなら、電話番号なんか知らなくてもいい。電話できなくてもいい。かけてくれるときもあるんやから、そのときを待てばいい。

そう考える私は、付き合ってるときも、別れてるときも、ずっと通話履歴を整理し続けてた。

毎日、毎日、新しく増えた履歴を削除して、公衆電話と非通知設定の名前が消えないように。

かけ直すことの出来ない番号なしの履歴を、愛おしく守り続けてる。
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