都合のいいオトコ
「頼むやろ?」
同席の子らがお酒を頼んでて、ミツルも私に声をかけてきた。
他の子と同じように、自分もビールを注文しようとしてたけど、注文表に記入しようとしたとき──
「酒はやめとけ」
ミツルは私の頭に手を置いて、手から注文表とペンを奪い取る。それを向かいの女の子に渡し──
「烏龍茶って書いといて」
と、勝手に飲み物を決めてきた。
「ビールでいいのに」
お酒とソフトドリンクの値段は、100円くらいしか変わらん。どうせ飲むならと、どの席でも私は酒を頼んできた。
ソフトドリンク1杯で、酒と変わらん額を払わせるのは申し訳ないと考えててんけど。
「顔、鏡で見てみ。猿みたいやで」
ミツルはずっと向こうをむいてばっかやったのに、私が酔ってることに気づいとったらしい。
「……だいぶ飲まされたんけ?」
「飲まされたわけやないよ。……遊園地はもう休みに入ってるから、気にせんと飲んでるだけ」
ダブル指名をくれてるチエリのテーブルには、キープしてる芋焼酎のボトルが置いてあったから、最初はずっとそれを飲んでた。
でも、途中でそのお客さんはドンペリをおろした。多分やけど、チエリが店をやめる話をしたんやと思う。
そっからはずっとドンペリを飲んでる。ネクターで割って飲みやすくはしてるけど、飲み干すためにおかわりをしてたら、顔は火照り、まぶたも重たい。
「……ごめん。あと1回は来れると思うけど、もう少ししたら、また呼ばれると思う。……向こうで指名もらってるから」
指名がかぶってることを思い出して、そう伝えると、ミツルはチラッと私に目を向ける。