都合のいいオトコ
その目はとても冷たくて、酔っ払った私にウンザリしてるように見えた。
「……ごめん、酔って迷惑かけた」
カバンからケータイを出して時刻を確認すると、店を出てから1時間以上経ってる。
ついでに、通話履歴も開いたけど、マコトからの連絡は来てへんかった。
ケータイの画面を静かに見つめてると、黙ってこっちを見てたミツルが口を開く。
「かけ持ちで働くの、やめたほうがええ」
真剣な顔をして何を言い出すのかと思えば、仕事についての話。
「……貯金しとかな、なんかあったとき困るから」
「なら、夜だけにしとけよ。キャバのほうが給料あるんやろ?」
「……今はそんなに。かけ持ちやめれば上がるかもしれんけど、両立をやめる気はないから」
ハライシさんがいなくなったことで、上がり待機も増えた。給料はまだもらってないから正確な数字はわからんけど、だいぶ減ってるんやと思う。
昼の仕事をやめれば、その分、お客さんと連絡をとれるし、指名の数は増えると思うけど。そもそも新規につくことができん今の私には、その可能性がどれだけあるのかもわからへん。
それに、私は……。
「なんで?」
「……」
「両立やめれん理由はなんなん?」
鋭く突っ込まれ、悩みながらも私は正直に話す。
「マコトから言われてるんよ。……夜に染まらんよう昼は辞めたらあかんって」
このことを話すと、案の定、ミツルの表情はより険しさを増していく。