都合のいいオトコ
「しゃあないやん……私には頼る人おらんねん。親に頼ることできへんから、お金は貯めとかなあかんねん」
実家暮らしのミツルにはわからん。
他人事やからそうやって言えるんや。
これ以上口を出さんでほしい。そう思いながら、言い返してたら──
「お前が待ってる男も助けてはくれへんやろな?」
ミツルはしつこく、マコトのことを悪く言うてくる。
それを聞いた瞬間、私の中で何かがプツンと切れてしまった。
「……なんなんさっきから」
「このままやと体壊すから言うてる」
「もう放っといてや」
「放っとかれへんから言うてんねん」
何を言うても、即答で返される。
彼氏でもないのに、なんでそこまで言われやなあかんの。そんな気持ちが強くなった私は──
「じゃあ、ミツルが養ってや」
あえて、ミツルに負担がかかるような言葉を口にした。
「頼る人おらんし、マコトも助けてくれへん。でも、ミツルはそうやって心配してくれんねやろ? じゃあ、両立やめるからミツルが養って!」
他人事やから、ああだこうだ言えるんや。なら、ミツルに負担をかければいい。こんなふうに言えば、きっと逃げるから。
そう思って、責任を押しつけると、案の定、ミツルの表情は冷静になっていく。
あんなに勢いよくああだこうだ言うてたのに、ピタリと話すのをやめた。
やっと終わった。そう安堵した瞬間──
「……ええよ」
ミツルはまっすぐ私を見つめ、真剣な表情でうなずいた。