都合のいいオトコ
3年後のふるい
──あの夜から、2年半後。
24歳になった私は、胸が隠れるほどまでのばした髪をばっさり切って、地元に戻っていた。
「他に買うもんは?」
「家着。古かったの全部捨てたから。ユニクロ寄ってほしい」
「了解」
あの日、私は引っ越したばかりで、友だちの車で生活に足りんものを買いに行ってた。
信号待ちの道路で、運転席の友だちは私の髪を見て「思い切ったな」とつぶやいてる。
「それにしても、マイの人生ってほんま色々あるよな」
「……それ、こないだも違う子から言われた」
「そりゃ、みんな言うよ。……高校んときも大変やったし、おばちゃん出ていったときも“この子どうなるんやろ”って心配したけど。“ミナミでキャバ嬢してる”の次は、“本出した”やもんな」
「……本の話は、一部の子にしか話してないから、他の子らには言わんといてな」
「言わへんけど、マイには毎回驚かされてばっかやわ」
ミツルと連絡を取らんなったあと、私は結局、過労で体を壊してしまった。
それを機に遊園地の仕事を辞め、夜1本の生活になったけど、店長との関係は悪化するばかりで、悩んだ結果、チエリと一緒にミナミで働くことを決めた。
23歳までキャバ嬢の仕事をしてた。