都合のいいオトコ
「まぁ、そのうち、いい人現れるよ」
「どうやろな。今は書く生活で、ずっと家におるし」
「誰かの紹介とかさ」
「……いい人が現れても、私って毎回、選択を間違うからな。しばらくは、付き合うのとかもうええわ」
恋愛はもうこりごり。あの3年で疲れてもうた。今は別のものに熱中してるし、誰かを好きになる時間もない。
──マコトから放ったらかしにされてるとき、高校時代のつらかった出来事を物語にしてホームページで綴ってた。
それが口コミで広まって、出版社からも連絡がきて、その話を本にしてもらった。
今は、経験をもとにした物語だけやなく、考えて書くこともするようになって、それが仕事になってきた大事なとき。恋愛する余裕なんて、ない。
後悔ばかりで、つらくて思い出すのも嫌やった出来事も、書くことで当時の自分と向き合えるし、その経験を形に残すことで忘れずにいられる。
つらい経験は、物語にしたら、これを書くためにあんな思いをしたんやと自分を納得させることができた。
大事な場面でいつも間違った選択をしてきた私にとって、この「書く」は自分を救う作業になってる。
「マイはここにおる?」
「うん。この辺のスウェットとか買うつもりやけど」
「なら、私はあっちのほう見てくるわぁ」
ユニクロに着いてから、家着にする服を探してた。
今の私は、外へ出かけるときの服よりも、家にいるときに着る服のほうが沢山必要やから、カゴにいっぱい入れててんけど。
「……」
スウェットを選んでるとき、視界の端で、こっちを見てる人影が映ってた。