都合のいいオトコ
「セフレのことがわかって、アイツも別れようとしててんけど、その彼女がミツルのせいにするから、別れたりはできんくて」

「……“ミツルのせい”? なんで?」

「アイツ、野球部やってんけど。部活で放ったらかしにしてたから、とか……」

ムッちゃんも初めて耳にする話やったみたい。黙って食べてたのに、元カノのセフレを作った理由を聞いた瞬間、「何それ」と口を挟んできた。

「そっから、アイツもマメに部活の後は彼女んちに通ったりもしててんけど。その女は結局、バイト先の年下の男ともそういう感じになってて」

「ええ……ミツルくん可哀想」

「俺もあんときは、マジで腹立ってさ……」

シューくんとムッちゃんが話す間、私はミツルの「好み」の話を思い出してた。

“ホンモノやったら何でもええかな”

“ホンモノ?”

“そう、ホンモノ。……よそ見せんと、ちゃんと1対1でやってくれてたら、外見とかはさほど気にせぇへん”

あのとき、ミツルは浮気されたことあるんかもって思ってたけど……。

「……」

浮気性の彼女で苦労したことがあった。そんな彼の目に私はどう映ってたんやろ。

“ええんちゃう? 健気やん”

そう言いながら笑ってたこともあったけど、ほんまはそんなふうに思ってなかったんかもしれん。

“お前……俺のこと、元カレが戻るまでの繋ぎにするつもりやったやろ”

“俺は、お前の都合のいいオトコになるつもりはない”

私に対して、警戒する気持ちがあったはず。

だから、「誰?」とか言うたりして、関わるのをやめようとしたんかもしれん。
< 137 / 142 >

この作品をシェア

pagetop