都合のいいオトコ

「その女と別れてからは、アイツ、彼女は作らんなってたし。……聞こえ悪いけど“遊ぶだけ”やってな」

「えぇ……ミツルくん、そんなふうに見えんかったわ」

「だから俺、結婚式でミツルがマイちゃんのことナンパしてるとき言うてん。あの子は元カノの友だちやからやめてくれ、って」

シューくんから聞く話ひとつひとつに、ミツルの記憶がよみがえる。

“本名、教えた記憶ないねんけど?”

“シューから聞いた”

思い出してると、記憶もどんどん鮮明になっていって。

当時は知らんかったことを聞いてしまった今、当時のミツルの気持ちも想像してしまい、胸がつかえて苦しい。

「俺、口説かれとったマイちゃんは、アイツの電話には出てないって聞いてたから安心しててん。……だいぶ気に入っとったから、アイツはへこんでたけどな」

“電話にも出えへん女が何言うてん?”

へこんでたって……。

キャバクラで再会したときは怒ってそうやったのに。

「周りも、それで“気晴らしにキャバでも行くかー”って誘ってたし、“マイちゃんとはそれ以上なんも無いんやろなー”って思っとった」

「……ははっ。そのキャバで会うたわ」

苦笑しながら、運命を口にしたミツルも振り返ってた。

「アイツ、俺から反対されるって思ってたんかな。キャバで会うたこと言わへんかったし、その後に聞いてた女の話でも“岸和田の女”って言うててん」

シューくんは呆れた口ぶりで「ほんまアイツは」とつぶやいた。
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