都合のいいオトコ
──今のミツルと会う。

ユニクロで顔は合わせてるけど、改まって会うとなると躊躇してしまう。

同じ「会う」でも、偶然やったあの日とはハードルの高さが違う。このふたりにセッティングしてもらったら、それは「遭遇」ではなく「自分から会いにいった」ってことになるから。

あんな振り方をしたのに会いに行くなんて、できへん。

「そうやって言うてもらえるんは……めっちゃありがたいんやけど、私が今独りでおるんは忙しいからなんよ。彼氏作っても会う時間がないし……」

「忙しいのはわかるんやけど、でも1回くらいは会ってみてもええんちゃう? ミツルくんも会いたいと思ってるかもしれへんし──」

「ムッちゃん」

親身になってくれるんは嬉しい。

でも、ムッちゃんがそう言うてくれるのは、ミツルとダメになったんはマコトが原因やったと思ってるからなんやろ?

そうじゃないんよ。

原因は、私。マコトにしがみついて、ミツルで寂しさをまぎらわせてた私が招いた結果やから──

「もうパワー切れ! 恋愛する気力ないんよ、今は」

ミツルに会いに行ったら、今度は私が頑張らなあかんのやと思う。でも、今の私にはそこまでの気力はない。

これ以上言われんよう、パッと明るく、笑ってこの話を終わらせた。

「そうかぁ。……ごめん、私ちょっとお手洗い行ってくるわぁ」

残念そうにしながらも、ムッちゃんは席を外す。

私も店員が持ってきた3杯目に口をつけ、皿に盛ってる料理を食べてた。

シューくんも同じように食べてたんやけど、

「マイちゃん」

彼はまだこの話を続ける気でおった。
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