都合のいいオトコ

「アイツ、岸和田の女の話してるとき、やっと一途な子見つけたって言うとってん。ホンモノやって」

「……」

その言葉を聞いた瞬間、胸がぐっと締めつけられた。

「アシにされてるやんけって俺は反対しとってんけど。アイツな、“好きな男おる間はしゃあない”って。“俺もあんな一途に想われたいんや”って羨ましがっとった」

“くだらんヤツをアホみたいに待って、ひとりでビービー泣いてるクソ女やろ?”

上書きされてく、ミツルの本音。

「ほんまに会わんでええん?」

シューくんは、そのときの「ホンモノ」って言葉を考えて、私と話す機会を求めたんやろう。

「……」

私はこの3年でだいぶ変わった。

マコトに対しても最後のほうは頑張れてなかったし、環境もがらりと変わってる。私が変わってるんやから、ミツルもきっと変わってるはずで。

現在の私がミツルに会いに行って、頑張って気持ちを伝えて、また想ってもらえるようになったとしても。

そのあとのことを想像すると、今度は会うヒマがないことでモメてる自分たちの姿が頭に浮かぶ。マコトとはそれでだいぶモメたから。

ふたりで過ごしとったあの時期にすんなり戻れるとは思えん。けど、今度ミツルと向き合うのなら、書くことを優先して、ミツルとの時間を後回しにするなんてこともしたくない。

もう、私の都合であの人を振り回したくはないから──

「他の男を選んだ時点で、私はニセモノやし」

私はめいっぱいの笑顔をシューくんに向けた。

「会わへんよ」

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