都合のいいオトコ
表情と態度が一気にふてぶてしくなった。
シラケさせてもうたかも。指名されてるってことを思い出し、機嫌を取る言葉を考えてたら──
「接客はええって」
ミツルは私の手を握ってくる。
「なぁ、マイ。ここでバッタリ会うたの、運命や思わん?」
「……運命?」
「そう。電話に出んくても会うてしまうんは、運命やろ」
暗がりで見ても白さがわかる、綺麗な肌。
奥二重の鋭い瞳に見つめられ、返す言葉に迷う私。
「……酔っ払ってる?」
「酔ってない」
話を変えようとしても、即答で切り返される。
ミツルと見つめ合ったままどう返そうか悩んでると、耳に微かな笑い声が届いた。
すると、目の前の真剣な表情はどんどん崩れていき……。
「おい、邪魔すんなや」
ミツルは恥ずかしそうな顔をして、一緒に来てた男の子らに文句を言い始める。
「ごめんごめん! でもお前、がっつき過ぎやろ!」
「なんか運命って聞こえてきてんけど」
「ぶっ! アホやろ、お前っ」
助かった。
色恋の接客は苦手やったから、どう対応しようか悩んでたけど、ミツルの連れがこの場を笑いに変えてくれた。
ホッとしてたら、向かいに座ってた男の子が私に向かって笑いかけてくる。
「ごめんなー。コイツ、急に“指名したい指名したい”ってうるさくてさー。キャバとか慣れてないから浮かれてんやしー」
「……え」
この人、私があの二次会におったこと、気づいてないんかな。あくまでもキャバ嬢として接してくることに疑問を抱いてると、
「お前、あんまがっついたら出禁になんで」
別の男の子が、再び、ミツルをからかい始める。