都合のいいオトコ

気持ちが落ち着いて、苦しさもなくなったのは、それから40分ほど経ってからやった。

酔いもまわってたし、泣いたことで疲れてて、身体はもうクタクタ。

眠気を冷ますためにシャワーを浴び、早めに朝の支度をし始めたけれど、時刻はまだ4時台。

「……やばい、寝てまう」

テレビをつけてつまらない通販番組を眺めてると、まぶたがどんどんおりてくる。

いつもならこの時間にキャバクラは閉店を迎えるから、私はギリギリまで店内のソファーで睡眠をとって、そっから家へと送ってもらってた。

帰ったらすぐにシャワーを浴び、休まず仕事の支度をして、そのまま家を出て……。

常に寝不足やったけど、少しは眠れとったし、日曜の夜はキャバクラが休みやから爆睡してて、それで何とか疲れをとってきた。

でも今は、起こしてくれるボーイがそばにおらへん。

眠たいけど、寝たら熟睡して起きられへん気がするし。家を出る時刻まであと2時間もあるのに、私はこのまま起き続けることが出来るんやろうか。

まぶたにめいっぱい力を入れて、眠気に抵抗する。そんな私の脳裏に浮かんだのは──

“何時でもええから連絡して”

1週間前のミツルの声。

悩んだけれど、数分後、耳にケータイを当てていた。

3回鳴らして出ぇへんかったら諦めよう。そう考えてたのに、ミツルはあっさりと2回目のコールで電話に出てん。
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