都合のいいオトコ
都合のいいオトコ
ニセモノ
何年経っても思い出してしまうのは、キミを選ばんかったことをちょっとだけ後悔してるから。
選んでも幸せにはなられへんかったのかもしれんし、選んでもうたら今この場所には辿り着けてない。そう考えると、あれでよかったんやなと思い直せる。
それでも、ふとしたときに振り返ってしまう。
冷たかったキミから垣間見えたあの切ない表情が、今でも忘れられへん。熱を帯びた瞳で見つめられると、とても心地よかった。
もう少し一緒におりたかった。
もっともっと知りたかった。
──ねぇ、ミツル。
今は幸せなんかな。
ホンモノにはちゃんと出逢えた?
ふたりで過ごしたあの日々を思い出してるのは、きっと、私だけ。そっちは振り返ってもないはず。
だって、私はミツルにとってニセモノやったから。