都合のいいオトコ

「ミツルはなんの仕事してるん?」

これ以上踏み込まれないよう逆にたずね返すと、ミツルは少し間を置いて答える。

「美容師」

「……あー」

めっちゃ納得。

髪型には気をつかってそうやし、女慣れしてるのも普段から女の子相手に接客してるからやろう。

何より遊んでそうやった。

「今、“3Bか”って思ったやろ」

「……うん。ちょっとだけ思った」

図星を突かれ、私は苦笑いを浮かべる。

美容師、バンドマン、バーテンダー。この3つの職業につく男は、一般的に「付き合っても幸せになれない相手」と言われてたりする。

「まー……実際、職場には女が多いし、客の中にも連絡とりたがる子はおるから、美容師と付き合って病んでく女は多いやろな」

ミツルはそう言うた後、もうひと言付け足した。「職で人間性まで決めつけられるんは萎えるけどな」と。

「……ごめん」

気を悪くさせてもうたかな。

私も、キャバクラの接客中に、お客さんから「キャバ嬢は皆こういう女や」と悪く言われたとき、めっちゃ嫌な気分になった。

やのに、私も美容師って聞いて、やっぱり遊んでんやろなって決めつけてもうて。

「美容師は客と浮気するってイメージ持ってたわ」

反省して謝ると、ミツルはなんも言わず黙り込む。

返される言葉を待ってたら──

「じゃあ確かめてみる?」

ミツルはぽつりと、落ち着いた口ぶりで聞いてくる。

「何を?」

唐突すぎて何の話かわからず、聞き返すと、

「美容師が浮気するかどうか」

付き合った前提での話をされた。
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