都合のいいオトコ
わがままな嘆き
ミツルと電話したのはそれっきりで、2週間ほど何事もなく過ごしてた。私は相変わらず、昼と夜は働きっぱなしで、寝不足がずっと続いててんけど──
「なんであかんの!?」
キャバクラでの“帰りたい病”は、頻度が増えてた。
「ハライシさんはもう帰ってんやから、いいやんか!」
その日も私はハライシさんに寝不足やってことを理由にして、早めに帰ってもらってた。
店も暇になってたから、てっきり帰らせてもらえると思っててんけど、
「あかん。マイは上がり待機」
店長は他の子を帰らせても、私が帰ることは許してくれなかった。
時刻は夜中の2時。金曜の夜やから、この後もお客さんが来ると考えて、一度上がらせてお客さんが来るまで、店で待つように言われてしまった。
上がり待機は、給与が発生しない時間。お客さんが来なければ、ただ待つだけの時間になる。
「明日、土日やから遊園地は忙しいし、睡眠とりたい」
日中の仕事を理由にして、引き下がらずにいると、店長はため息をつき、
「わかった。でも送りの車は定員オーバーや。戻ってきたら、次の便で帰ってええよ」
そう言って、私の前から去ってく。
「……っ」
車が戻るまでにお客さんが来れば、店長は絶対に、私をそこに連れてくはずや。そんで、結局はラストまで働くことになるんやろう。
前にもその手を使われたことがある。