都合のいいオトコ
「夜一本のが稼げるのに両立を続けてるんは、マコトさんとの約束のため?」
「……うん」
この店を教えてくれたんは、マコトやった。
お金に困って、昼の仕事の給与だけでやっていけんくなり、夜も働きたいと考えてたとき、マコトはキャバクラのキャの字も知らん私に「手っ取り早く金が欲しいなら」と働き先を見つけてくれた。
でも、働く上での条件も出してきた──「夜に染まらんよう昼は辞めたらあかん」と。
「別れてんのに」
「……多分、またヨリを戻すと思うから」
「もっといいオトコおると思う」
「……知ってる」
知ってるけど、それでも私はマコトを選ぶ。足掻いても足掻いても、マコト以外の人やとあかんかったから。
そうこう話してる内に、チエリのお客さんらが来店することになり、彼女はメイク直しをしに非常階段から離れようとする。
「お連れさんにマイを指名してもらう?」
チエリは上がり待機から抜け出せるようにと考えてくれたけど、私は首を横に振り、「帰りたいから」と断った。
チエリの席についても指名をとらんかったら、キリのいいとこでまた上がり待機にされるはず。送りの車さえ戻れば帰れるんやから、あと少しの辛抱。
そう考えててんけど──