都合のいいオトコ
その後、再び上がり待機となった私のところに、ボーイが「もう上がっていいよ」と声をかけにきた。
でも、店長からの指示があったのか、ボーイはなかなか送りの車を出してくれへん。
「もう少ししたら他の子も帰るから」と言い、その時間まで待つように言われてしまった。
「……帰りたい」
私服に着替えて、非常階段でうずくまってた。
今そのときのことを振り返ると、店長が怒るのは当たり前のことやと思う。仕事やのに「帰りたい、帰りたい」と言って、とれる指名もとろうとせんかったんやから。
でも、その頃の私は、キャバクラでの仕事に嫌気をさしてた。かと言って、簡単にやめることもできんかった。働けばそこそこ高い給与をもらえてたから。
そういう意味でほ、仕事の両立を続けてても、私は夜に染まってたんやと思う。
金曜の夜は遅くからも来店するお客さんはいる。上がり待機の状態から抜け出したい女の子らが、必死に連絡をとったことで、店内の6割はお客さんで埋まってた。
当然、帰る子も減ってしまい、私は非常階段で待機したまま。タクシーを呼んで帰ろうかなと考えたけれど、たまにボーイが顔を出して「もう少し待ってな」と声をかけてくるから、ズルズルい続けてる状態やった。
こんなことならハライシさんを帰すんやなかった。そんな後悔が頭をよぎったとき──