都合のいいオトコ

縮められていく距離


言われた通りにしてコンビニの駐車場へ行くと、白い軽自動車がとまってた。

車に乗ったままのミツルは誰かと電話してて、私は声をかけることなく、助手席のドアを開ける。

「……おー。せやから今日は帰るわ」

一緒に来てた友だちと話してたんやと思う。

電話を切ったミツルは、隣に腰掛けた私に目を向け、車を走らせた。

「そこの道を大阪方面に行ったら、右手にスーパー出てくるから……そこを左」

「スーパーな」

車内では道案内しかしてなかった。

「……ここでいい」

自宅の手前にあるコンビニで、車を止めてもらった。

家を教えんことに対してなのか、ミツルはシラケた表情を私に向けてくる。

「……ありがとう」

お礼を言うて、車のドアを開けたら、ミツルはすぐさま口を開く。

「まだこんな時間やけど、話し相手にならんでええんけ?」

軽自動車の中、運転席のミツルは体が大きいから、他の人と乗ってるよりも車内が狭く感じる。

ハンドルに手をかけたミツルに問いかけられ、カーステレオの時計に目を向けると、確かに時間は中途半端やった。

この後、帰ってから寝ると、きっと起きるのが大変で。でも、朝の支度を始めても、微妙に時間が余って眠気と戦わなあかんなる。

この前ミツルに電話をかけたときと同じ状況やった。
< 33 / 142 >

この作品をシェア

pagetop