都合のいいオトコ
迷いながらもおりずにドアを閉めると、ミツルは口もとをゆるめて車を走らせた。
信号待ちの道路では、運転しながら後部座席へと片腕を伸ばし、掴んだ袋を私の膝もとに置いてくる。
「……これ、私に?」
「腹減ってへん?」
サンドイッチとお茶のペットボトルが入ってた。
「減ってる。待って、お金払うわ」
「ええよ、そんくらい。キャバ代も浮いたしな」
「……ありがと」
ペットボトルの蓋を開けて、ひと口飲む。
ミツルは住宅地の広い道路に車を止めて、窓を開けた。
タバコを吸う彼の隣で、黙々とサンドイッチを食べ、自分もタバコを吸い始めたら、
「目つぶってれば少しは疲れとれるんちゃう?」
ミツルは手元の携帯灰皿を私のそばに置いて、体をいたわってくる。
「……そうなんかな」
「シート倒して横になっとけば?」
「……うん」
うなずいたものの、シートを倒すことには抵抗があった。
吸い終えてからも、体勢を崩さずに窓の向こうに目を向けてると、ミツルは運転席から身を乗り出して、私の体をおおってくる。
「ここで、倒せるから」
シート横のレバーを引かれ、背もたれが前へと倒れてきた。慌ててもたれた私は、シートが後ろへ行くよう体を倒したんやけど。