都合のいいオトコ
素直に言われるまま横になってたけど。
「……あんなんされた後で寝れるわけない」
変にソワソワして、ミツルが立てる物音に敏感になってた。
「なら続きでもしよか?」
「せんでいいです」
どこからがほんまでどこからが冗談なんかがわからん。
横向きの体勢で運転席を眺めてたけど、ミツルは私と言い合う間もこっちを見ることはなく、タバコを吸って外を見てた。
私の反応を面白がるように、口もとをゆるめながら。
そうこうしてる間に、ほんまに眠くなってきて、小さくあくびをしてたら──
「なんでキャバ嬢になったん?」
ミツルは夜の仕事について聞いてきた。
「……お金がほしいから」
どこから話すか考えて、詳しく言うても重いだけやから簡単に返した。
「普通の居酒屋とかやとあかんのけ?」
「……あかんってわけでもないけど」
今はそこそこ貯金がある状態やから、「絶対この仕事やないとあかん」とまでは思わへん。
でも、遊園地とキャバクラの両立を始めた頃の私は、生きてくために必死で、余裕なんてなかったから……。
「実家で住んでたとき、親が急に出ていって……住むとこなくなってん」
こんな話をしたって。そう考えてたはずやのに、眠気もあって、後先なんて考えずに話してしまった。
「……知り合ったばっかの、ひとり暮らししてる女友だちに頼んで、一緒に住まわせてもらったりしててんけど。……その子の彼氏から邪魔に思われたりしてて。途中からは荷物だけ置かせてもらって……色んな友だちんちを転々としてた」
あくびをして、目を閉じながら、ひとり暮らしをするまでのことを振り返る。