都合のいいオトコ

ダイニングバーに着くと、新郎新婦の席は短大の子らや新郎の友達に囲まれてて、私とナギはユミちゃんに声をかけるのを後にして、隅のほうの席へと向かった。

「マイちゃーん、ナギちゃーん」

途中でハナに声をかけられ、私らはそのまま、ハナたちに混ざってんけど。

「なぁ、あそこにおるん……ムッちゃんの元彼やない?」

ナギが、近くの席におる男の子を指さした。

「……ああ、せやな。シューくんやわ」

同中で、私の幼なじみでもあるムッちゃんって子が、高校んときに付き合ってた男の子やった。

喋ったことはないけど、プリクラで顔は知ってたし、実家で暮らしてた頃に近所ですれ違ったこともある。

「新郎さんと友達なんかな?」と話す私らの声を聞いて、同じようにそっちへ目を向けてたハナが口を開いた。

「あの辺は阪南。新郎、阪南の人らしいから」

そう言いながら、シューくんのテーブルにおる数人のひとりに、ヒラヒラと手を振り始めた。

長めの茶髪で、あごヒゲをはやした男。

「あれは、同じ高校やった子」

ハナに気づいて、相手の彼も同じように振り返してくる。

私とナギは、ふたりの様子を静かに眺めていただけやってんけど……。
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