都合のいいオトコ
同じ時期に入社して、初めの頃は一緒に帰ることもあった8つ年上の女性、静香さん。通称シイちゃん。
シイちゃんの仕事は園内放送。入場ゲートすぐの事務所に隣接した小部屋で、毎日決まった時間にイルカショーなどの案内を流したり、迷子の対応をしている。
部屋には簡易的なベッドもあって、一緒におる保健師のおばさんが体調を崩したお客さんを診てるとき、そのお手伝いをすることもあるらしい。
園内の奥にあるイベントホールでショップの店員をしている私とは、女子更衣室を使う時間も合わなくて、最近は放送でしか声を聞いてなかった。
「シイちゃん、今日は遅いんやね?」
「そうなんよ。事務所に呼ばれてて時間かかってもうた。マイちゃん一緒に帰ろっ」
美人やのに気さくで優しくて、考え方もオトナの女性。
新婚さんで、旦那さんには「妹ができたみたい」と言ってくれてるらしく、私はその言葉に甘えて、よく相談とかしとった。
「そういや、聞こうと思っててん。マイちゃん、元カレくんとより戻したん?」
遊園地を出て駅まで歩く中、シイちゃんは突然、マコトの話を振ってきた。
「え? 戻してないよ」
「あ、そうなん? ……そっか」
首を横に振るときょとんとした顔をされる。