都合のいいオトコ

「なるほどー。それで車からおりてくるところを戸田くんが見かけたってことかぁ」

「うん。いつのことかわからんけど」

「戸田くんが愚痴ってたのは一昨日やったかな? 雨で暇やった日」

駅のホームで電車を待ちながら、戸田さんが見かけたという雨の日の朝を思い出す。

いつもは車に乗ったままやのに、あの日のミツルはわざわざ降りて、傘をさして助手席のドアを開けてくれた。

私が自分の傘を開くまで、濡れへんようにしてくれた。これまで男の人からそんなふうにされたことなんてなかったから、ミツルのその行動には驚いてんけど……。

「でもいいやーん。そのミツルくんって子、私は好きやなぁ。大事にしてくれそう!」

「……どうかな」

シイちゃんは、私とミツルがキャバクラで再会したというエピソードを聞いた辺りから「ドラマみたいやな」と言うて、ワクワクした表情をしてた。

毎日送ってくれるようになったと話してからは、相づちが「いいやーん」ばっかりで、ミツルの株は相当上がってるみたい。

「そういう人なら付き合ってもいいように思うけどなぁ、私は。マイちゃんはその人のこと、あんまり?」

「……んー」

ミツルがどうこうっていうよりも、

「そのうち、マコトから連絡あると思うし」

私はそう考えてしまう。

だって、他の男を見ても、どうせ私はマコトを選ぶことになるから。
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