都合のいいオトコ

「あー……そこでマコトくんが出てくるんかぁ」

シイちゃんは目を閉じて、深々とため息をつく。

「……マコトってさ、私に盗聴器でも仕込んでるんやないかってくらい、勘が働くんよ」

「勘?」

「うん。……別れてるとき、何週間……何ヵ月と連絡がなかった状態やのに、私が他の人に誘われてデートをしたら、ピンポイントでその日にメールを送ってきたりな。しかもデート中に」

「えっ、それほんまに盗聴器つけられてんちゃうの?」

シイちゃんの顔が真っ青になった。

私はううんと首を横に振る。

「マコトは私に盗聴するほどの興味は持ってないから」

あれは気まぐれで連絡しただけなんやと思う。

「でも、デート中でメールの返信が遅くなったら、マコトは“隣に男おるんか”って聞いてくる。そんで、その日から毎日連絡してくるねん」

一度や二度じゃない。何度もそういうことがあった。

「……でも浮気じゃないやん? 別れてるんやから、マコトくんに責める権利なんてないでー?」

「マコトは責めたりせぇへんねん。でも、男の影があるって感じたら、毎日連絡してくる」

「そんな……元カレなんて気にせんでいいのに」

「気にするっていうか、連絡がきたら……もうそこで、私の頭ん中はマコトでいっぱいになるんやし。……他の人のことは、どうでもよくなってしまう」

この人はマコトの代わりでしかなかったんやと思い知らされる。
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