都合のいいオトコ
次の瞬間、あごヒゲの彼の目が、私へと向いた。
「……ナギ、飲みもん取りに行こ」
3秒ほど目が合ってた私は、平静さを崩さんまま、目をそらして席を立った。
「ユミんとこ、まだいっぱいおるから話しかけづらいなぁ。写真撮りたいんやけど」
「……もうちょい落ち着いたら、一緒に行こっか」
ビュッフェの料理をいくつか皿に盛りながら、新郎新婦のふたりを遠くから眺めるナギ。
その隣で酒を選ぶ私は、静かに数分前を振り返ってた。
「……」
21にもなると、相手と目を合わせただけで、自分にどういう気持ちを抱いてんのか読めてしまう。
多分やけど、私の外見は、あのヒゲ面の好みの範囲に入ってたんやと思う。
結婚式の二次会という知り合いが多い場所で、そんな目で見てくる奴がいるってことにうんざりした私は、面倒くさいことにならんよう、早めに帰ろうと考えてた。
でも……。
「おかえりー!」
「……ただいま」
飲みもんや料理を持って元の席へ戻ると、私らに声をかけるハナのそばには、もうヒゲ面の男が座ってた。