都合のいいオトコ
「私も元カレを忘れるから、アントも元カノを忘れてほしい」
うちん家で飲み会をした日、ヤマシタくんとムッちゃんが酔いつぶれて眠る中で、私はマコトの連絡先をブラックリストに入れた。
「約束する。……元カレのことも忘れさせる、絶対」
アントも元カノの連絡先を消してくれて、私らはもう一度、一からやり直すことになった。
だけど、それから1ヵ月が経ったある日、私はやらかしてもうた。
「ごめん。コイツもう酔ってるから、一旦家で寝かせてくるわ」
互いの友だちを居酒屋に呼んで、大勢で飲んでた日曜の夜。
私は、普段飲まへん種類の酒を口にしたことで、一気に酔いが回って、アクビばかりするようになってた。
そんな私を、アントは家へと連れて帰ってくれた。
「俺、1回戻るけど……帰りに寄っていい? 酒入ってるから泊まらせて」
ぐでんぐでんに酔っ払ってた私に、鍵を閉めるよう言い聞かせ、アントはもう一度、みんなが待つ居酒屋へ向かう。
そっからの記憶はないから、私はすぐ眠りに落ちたんやと思う。
どれくらいの時間が経ってたのかもわからんけど、私はインターホンの音で目を覚ました。
フラフラ歩いて、下のオートロックを開けるボタンだけを押し、玄関の鍵を開けてから、そのままベッドに戻る。
てっきり、アントが帰ってきたんやと思ってた。