都合のいいオトコ

せやけど、すぐに思い出したのは──

“元カレのことも忘れさせる、絶対”

アントの真剣な表情。

「……帰って」

「なぁって……」

「戻らへん! 私かって幸せになりたい!」

マコトと幸せになりたかった。

でも、マコトはできへんやろ? 電話も出えへん。約束も守らん。どこに住んでるのかもわからん。

浮気だってするし、全然誠実じゃない。

「マイ、なぁマイ……こっち向いて」

「向かへん、帰って!」

「わかった。帰るからこっち向いて」

マコトはいっつもこう。

自分勝手で、私が怒ってても全然動じへんし、上手いこと言うてなだめてくる。

「嫌やってば! 放して!」

「嫌ちゃうやろ。なぁ」

「っ、嫌やから! 触らんで!」

「なぁマイ、こっち向いてって」

無理やり向かせられる顔。

睨みつけても、マコトはヘラッと笑いかけてくる。

「酒くっさ……どんなけ飲んだん?」

頭ん中がバグり始めてた。

離れてた時間なんか無かったかのような、距離の詰め方。マコトはいつも、こうやってよりを戻そうとする。

「……お願い。もう帰って」

このままやとやばい。私はまたマコトに戻ってしまう。

愛おしい顔が真ん前にあって、恋焦がれた匂いに包まれる。頭ではあかんと思ってても、懐かしくて、私の胸はギュッとしめつけられてた。
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