都合のいいオトコ

「ほんまに嫌やから」

マコトへの想いを必死にこらえてたら、涙が溢れてきて。

そんな私を見たマコトは、簡単に頭を撫でてくる。ほんまに卑怯で、最低な男。

「なぁ、ごめんって」

「帰って……」

抱きしめようとしてくるから、体をおしのけて、諦めてくれるまで「帰れ」と言い続けてた。

でも、そんなとき──インターホンが鳴った。

「っ!」

「……彼氏?」

マコトはすぐさま私から離れていく。

「ちょっとやめて! 何すん……」

「直接言うたほうが早いから」

止めようとする私の腕を振り払い、勝手に下のオートロックを解除する。

「直接言うって何言うつもりなん! もうやめて!」

スタスタと玄関のドアに向かうから、慌てて引き止めててんけど──そうこうしてる間に、部屋の前からもインターホンを押されてしまい……。

「どうぞ」

凍りつく私を置いて、マコトは玄関のドアを開けた。

「……誰?」

私らを見た瞬間、アントの表情は険しくなった。

「前に話した……元カレ」

私がそう答えた瞬間、マコトは口を開く。

「マイのこと返して」

そっからはほんまに修羅場やった。

「は? 返すってなんなん。マイは物ちゃう──」

「そういうのええって。俺のもんやから」

マコトはわけのわからんことを言うて、アントの前で私を抱き寄せる。

「もう帰って! 私はあんたのもんやない!」

押し返して、追い出そうとすると、

「俺のもんやろが! なんで連絡とれんようにして他の男に行ってんねん!」

すごい剣幕で怒鳴ってきた。

「おい、放せって」

「触んな! マイは俺の女じゃ!」

「アホか。もう別れてんねやろ。今は俺と──」

「うっさい。触んなって言うてるやろ!」
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