都合のいいオトコ
見透かされたずるさ
ミツルはテーブルにひじをついて、だらっとした体勢でテレビを眺めてた。
私が戻っても視線をよこすだけ。その態度を怖く感じるのは、私の中に後ろめたさがあるからなのか。
「……テレビ、通販しかやってない?」
ミツルから目をそらす。テレビのほうを向きながら、視線はその隣のカラーボックスの上。
写真立ては伏せたままになってた。
「んー、ウトウトしとった」
「……ちょっと寝る?」
「いや、大丈夫」
目つきが鋭いような気がしたのは眠たかったから?
ミツルの顔色をうかがいながら、ドライヤーを出すと、
「……ん」
よこせ、と言うかのように手を出された。
「頭、ちゃんと洗ったんけ?」
「洗ってます」
テーブルのそばに座ると、ひざ立ちで乾かしてくれる。
強めの風と、首をかするミツルの手。髪への触れ方がそれっぽくて、改めて、美容師なんやなと思った。
「……化粧していい?」
「えーよ」
乾かされながら、支度を始める私。
今更やけど、こんなに平和やと、写真立てをあんな形で置いといたことを後悔してしまう。
「この後で見られたら」と考え、隙を見て隠そうかなって思ってた。
髪の毛がふわふわと風になびくようになった頃──
「……ジロジロ見んで」
「見てへんよ」
眉毛を描いてると、鏡越しに何度も目が合う。
「……」
「……」
「見てるやん」
「見てへんって」
鏡に映ったミツルの口はにんまりと笑ってて、私は眉毛が見えなくなるように鏡を持って、化粧を続けてた。
でも、ミツル相手やと素の自分でおれる。スッピンかって、見せることに抵抗がなかった。
いつの間に、こんな仲良くなってたんやろ。
想像してしまう。付き合ったらこんなふうに過ごすんかな、って。
シイちゃんの言う通り、ミツルとおってもいいんかもしれへん。気持ちもそう傾き始めてた。