都合のいいオトコ
「さっきも言うたけど、同級生のミツル。新郎さんとは小中で一緒やってんてー」
「そうなんや。あそこにおる人ら、皆?」
ハナからヒゲ面の男──ミツルを紹介される。ナギはシューくんも同郷なのか知りたそうやった。
ミツルはその質問にうんとうなずきながら、視線を私のほうに向けてくる。
「どーも」
料理をテーブルに置いてたら声をかけられた。
私を見上げる余裕のある表情や、その軽い口ぶりから、かなり女慣れしてるように感じる。
狙われてるような気がして、私は軽く会釈だけをし、椅子に置いてたカバンを腕にかけた。
「食べる前に吸ってくるわ」
ミツルがこっちにおる間は、外におろう。そう考えて、席を外す。
──店を出ると、外はもう真っ暗やった。
店の前には筒状の灰皿が置かれてた。私は歩道のガードレールに腰掛けて、旧26号線の道路を眺めながら、タバコに火をつける。
前を通り過ぎてく車をひとつひとつ確認してた。「旧2やから、もしかしたら通るかも」って考えて。
ハタチの頃から1年半付き合ってる──マコト。
付き合ってると言うても、何度も何度も別れを繰り返してて、その時期は別れて2ヵ月くらい経ってた。
連絡しても返事がなくて、でも、いつかまた必ず連絡が来るはずやと確信してる自分がおって。
その二次会の日も、岸和田なんてめっちゃ広いし、車が目の前を通り過ぎてくのも一瞬の速さやのに、もしかしたらバッタリ逢えるんやないかと期待してた。