都合のいいオトコ
「大体わかった」
いつもの通りに車を停めて、ミツルはタバコをくわえる。窓を開けながらライターで火をつけた彼は、
「でもひとつ質問がある」
とつぶやいて、最初の煙を吐き出した。
「写真はなんであんなところにあったん?」
鋭いツッコミ。
「見せへんつもりなら、見えへんところに隠すやろ、普通」
「……」
痛いところを突かれ、言葉が詰まる。
ミツルは気づいてるんやろな。そういう女やとわかった上で接してもらおうとしてた、私のずるさに。
「……まぁええけど」
何も言えずにいると、ミツルは窓の外を見る。
向こうをむいたまま、ため息をついてた。
「もう別れてんねやろ? 待ってても、連絡なんかこうへんかもしれんやん」
「……来ると思う」
「その自信はどっから?」
即答したことを呆れられた。
でも、私はこれまでを知ってる。今までのマコトを振り返れば、この前のあんな簡単な別れ方で、関係が終わりになるとは思えんかった。
「これからクリスマスとかあるし……。冬の間は、連絡してこうへんと思う」
「なんやそれ」
イベントとか嫌がるところはあるけど、別れてても、マコトは私からの連絡を欲しがるところがある。
正月、電波が混んでて「おめでとう」のメールが遅れただけやのに、マコトは送ってこんことを怒ってきた。
「……私の誕生日には、絶対に連絡が来る」
一緒に過ごすことを面倒くさがって私を振ってたくせに、0時0分ちょっきしに電話をかけてきたりする。
マコトはそういうヤツ。