都合のいいオトコ
ねぇ、ミツル。
あの後、ミツルは「寝たほうがええんちゃう?」と言って、時間を見せてきたよね。
おとなしく横になってたけど、実は一睡も出来てへんかった。
背を向けて、目をつぶりながら聞いてたミツルの動き。
しんとした車内でタバコを吸う、ライターの音が怖かった。
朝になって、起こされて、寝てたフリをする私に、ミツルはいつもと変わらん態度で接してきた。
「いってらっしゃい」
車から降りると、ミツルは普段通りに見送ってくれる。
その様子に安心して、仕事に向かった私。
呆れられてるってことは自覚してたけど、このまま、この調子で続いていくもんやと思ってた。
ほんま、ふざけたこと考えてたわ。
──出逢った頃のあの楽しそうな表情は、その日以来、目にすることはなかった。
それからのミツルは、ずっと、何か言いたげな顔で過ごしてたよね。