都合のいいオトコ
ひとりぼっちの限界
──高校んとき、一途でおらんかったことを後悔したことがある。
近くでおった人が急に遠くへ行ってもうて。連絡しても繋がらん。向こうからは何も来うへん。
微かに感じとった「秒読みかも」って距離も、いつからか疑うようになってた。ひとりでそう感じてただけやったんかなって。
他の人とは連絡をとってるって知ったとき、傷ついた。
連絡を無視することにも腹が立った。そんな遠回しなことせんでもええやん。避けたりせんとはっきり言うたらええのにって。
避けられてることが恥ずかしくて、そんな自分がみじめに思えて、周りにもそんな自分を知られたくなかった。
待つって決めてたのに、そんな想いはすぐに崩れた。
あんなのは決心じゃなかった。秒読みやと思い込んでたから抱けた気持ち。
帰ってくると聞いとった日が過ぎて、すぐに私は諦めた。帰ってるのか確かめもせんで、他の人に逃げてもうた。
でも……。
“ただいま”
あの人は、帰って一番に私のところへ来た。
秒読みやった関係が終わってなかったことを知って、待たんかったことを悔やんで。
やっぱり好きやと思っても、そっからはすれ違ってばっかで、もう二度と、あの場所には帰れんかった。
過去に戻れるならいつに戻りたいか。他人からそう聞かれるたび、あの時期の自分を振り返ってきた。
だから、マコトのことを諦めるのが怖かった。
つらくても好きでおり続けなあかんと思ってた。じゃないと、また後悔してしまうから。
“健気やん”
ミツルが皮肉で言ったその言葉を、褒め言葉として受け取ってた私。
そうなんよ、私は健気なん。こんな扱いをされてても、一途にマコトのことを待ち続けてる。
待たんかったら絶対に後悔するから。好きやと思う間は、ここから動いたらあかん。
ずっと、そう考えて耐えてるんよ。