都合のいいオトコ
──マコトのことを言わんまま一緒におると、騙してるような気がしてた。だから、あんな形やったけど、話せたときは胸のひっかかりがなくなって、スッキリした。
これからは、そういう女やと知った上で接してくれるはず。いつかはマコトに戻るかもしれないと考えるはずやし、そう思ってもらえれば、戻ったとき、ミツルもすんなり理解してくれるやろう。
そんなずるい考えでおった私は、打ち明けた日の夜も、ミツルの電話を鳴らしてた。でも……。
「誰?」
いつも通り、繋がってすぐに「もうすぐ終わるよ」と伝えたら、ミツルは間を置いてそうたずねてくる。
「え、私やけど。マイ」
最初は寝ぼけてるんかなと思っててんけど、
「……“マイ”? 誰かわからん」
名前を言うてもすんなり通じへんから、わざと、とぼけてるんやとわかった。
「何言うてんの。朝まで一緒におったのに」
「……え、誰?」
声からはふざけてる感じはせぇへん。
ほんまにわからなさそうな口ぶり。
一瞬、違う人に連絡したんかと思って、ケータイの発信履歴を確認した。
でも、通話してる相手は、やっぱり「ミツル」で。
「なんでそんなん言うん?」
理解が出来へんかった。
だって、朝まで一緒におって、「いってらっしゃい」っていつも通りに送ってくれたのに。
「……元カレのこと話したから?」
なんでと聞いてるけど、意地悪をされるとしたら、原因はそれやと思った。
「怒ってるん?」
ミツルの本音を聞こうと思った。
でも、彼はその後も、
「え、誰かほんまにわからん」
知らないふりを続けてくる。