都合のいいオトコ
「まぁでも、今日は送りで帰るから」
「あ、そーなん?」
「……うん」
ミツルはさっきも「誰」って言うてきた。昨日のやり取りすらも覚えてない様子で。
もう電話せんほうがいいんかもしれん。多分、ミツルは私との関係を終わらせようとしてるから。
「……そっかぁ。明日は遊園地あるん?」
「ううん、明日は休み」
「そうなんやー……」
チエリはタバコを吸いながら、私の予定を聞いて、少し間を置いてから口を開いた。
「マイんち行こうかな」
「……え?」
初めてのことやった。
チエリとは同い年で、店やと一番気が合う子やけど、関わるのは店の中だけでやったから。
休みの日に連絡することなんてなかったし、遊びに行くこともなかった。
だから、急に来るって言われたときは、すんなり「おいで」とうなずくことが出来んくて、「どうしたんやろ」と心境を探るような目で見てしまったのを覚えてる。