都合のいいオトコ

「まぁでも、今日は送りで帰るから」

「あ、そーなん?」

「……うん」

ミツルはさっきも「誰」って言うてきた。昨日のやり取りすらも覚えてない様子で。

もう電話せんほうがいいんかもしれん。多分、ミツルは私との関係を終わらせようとしてるから。

「……そっかぁ。明日は遊園地あるん?」

「ううん、明日は休み」

「そうなんやー……」

チエリはタバコを吸いながら、私の予定を聞いて、少し間を置いてから口を開いた。

「マイんち行こうかな」

「……え?」

初めてのことやった。

チエリとは同い年で、店やと一番気が合う子やけど、関わるのは店の中だけでやったから。

休みの日に連絡することなんてなかったし、遊びに行くこともなかった。

だから、急に来るって言われたときは、すんなり「おいで」とうなずくことが出来んくて、「どうしたんやろ」と心境を探るような目で見てしまったのを覚えてる。
< 67 / 142 >

この作品をシェア

pagetop