都合のいいオトコ
「あー、これがマコトか」
カラーボックスの前に立って、写真立てを見られた。
「ふうん。なんかに似てる」
「……ケミストリーの堂珍?」
「あー、似てるかも。堂珍の顔、忘れてるけどー。あ、マイも金髪やーん」
「店に入った頃もその色やったで」
「そうやったっけ? ……あははっ! 全く覚えてへん。最近までマイには興味なかったからー」
「でしょーね」
テレビをテキトーにつけながら、なかなか座らんチエリを見上げる。
頭ん中では、店を出るときのチエリと店長を思い出してた。仲良かったふたりが目も合わせなかったところを。
「……ケンカでもしたん? 店長と」
声をかけると、チエリは写真立てを元に戻して、こっちを向いた。
「“ケンカ”かぁ。……マイってどこまで気づいてるん?」
ようやく腰を下ろした彼女は、私の顔色をうかがいながら、そう問いかけてきた。
「……んー」
今までの私らは、私の話しかしてへんかった。
チエリはいつも聞く側に回ってて、自分のことを話してけえへん。
私も、相手が相手なだけに、むやみに聞くってことができへんくて、チエリから話してくるのを待ってたけど……。