都合のいいオトコ
この時間は何してるんやろ。まだ仕事の時間?
今は、付き合ってる女が他におるんかな。
星も出てない空をぼうっと見上げ、小さなため息をつく。ユミちゃんのドレス姿を見た後やから、余計につらくなってた。
そんなとき、突然、店内の騒々しい音が聞こえてくる。顔を向けると、ミツルが店から出てくるところやった。
うわ、ついてきよった。うんざりした私は、火をつけたばかりの2本目を吸うのあきらめる。
入れ違いになるよう店内へ戻ろうとしててんけど──
「ごめん、ライターある?」
ミツルの前を通り過ぎようとした瞬間、話しかけられた。
「……」
ないとは言えん。吸ってるところを見られてるから。
黙って100円ライターを渡すと、ミツルはにっこり笑って「ありがと」と言い、タバコをくわえた。
私は火をつけるところを見届けずに、すぐにそこを離れる。
「あ、ちょい待って……」
慌てて使ったライターを返そうとしてきたけど──
「あげるよ。カバンに何個か入ってるし」
私はそう返して、灰皿にタバコを捨てた。
ナンパの相手をするくらいやったら、100円なんて安いもんや。そう考えて店内へと戻る。