都合のいいオトコ
「なぁんや。結構知ってるんやなぁ」
「……まぁ、見てたら大体わかるし」
「ふうん。……なら、これも気づいてる?」
チエリは細長いメンソールのタバコをくわえて、お気に入りのライターで火をつけた。
「店長のお気に入りがかわったこと」
「……」
「あー、その顔は気づいてるやつやん」
私の顔を指さして、ケタケタ笑うチエリ。
図星をつかれても、同じようには笑えんかった。
「……ごめん。最近はさっさと帰ってたから、なんも聞いてあげれてなかった」
「えー、なんで謝るん。私もマイに話してなかったし」
チエリはニコニコ笑って、平気そうに振る舞うけど、その表情が引きつったものに感じてしまう。
「……店長、何考えてんやろ」
同棲してる女がおるのに、チエリに手を出して。
最近は、新人のリサちゃんのことをあからさまに可愛がってる。あの子も送りの車やなく、店長に送られてた。
「店長が考えてんのは、自分の昇格だけやよ。私のことを囲ってたのも、ミナミの店に帰らんようにして、店の売り上げをよくするため。……マイも私も、そのうちリサちゃんにランキング抜かれるかも」
「……私はともかく、チエリのことは抜けやんやろ」
「そうかなー? 私、最近は嫌がらせでお客さんも呼ばんようにしてるしー。店長はリサちゃんに太客つけまくってるから、抜けると思うけど」