都合のいいオトコ
「そっか。イタニ、告ったんか」
美容の学校に通ってて、いつもオシャレで。なよなよした振る舞いをしたり、ヘラヘラ笑ってばっかやけど、話すとめっちゃ優しい男の子。
私を引き止めてるときの姿は、いつもと違って真剣で、見てて切なかった。
「でも、店内恋愛は禁止やろ? 店長にバレたら……多分、イタニ……ヤバいで?」
店長自身はチエリやリサちゃんに手を出してるけど、ボーイが手を出すことは絶対に許さんはず。
バレたときのことを考えて、心配してたら、
「うん。だから私な」
チエリはカバンから手帳を出して、私の前に置いた。
「ミナミに戻ろうと思う」
「……ミナミ? え、店やめるん?」
「うん。ミナミのほうが慣れてるし、元々、ここには次の店が見つかるまでの繋ぎで通ってただけやから。……店をかえれば、イタニとはなんの問題もなくなるし」
話しながら渡された手帳を取って、中を覗いてみると、お客さんの連絡先や情報がぎっしりと書かれてた。
「チエリ、これ……」
「マイのことを気に入りそうな人らをまとめたん。これからはダブル指名でマイを呼んでくから、ちょっとずつ紹介するな。……全員を引き継ぐのは無理かもやけど、相性がいい人はもらってほしい」