都合のいいオトコ

「でもさ、マイちゃんが言うように、終わらせたいんなら着信拒否をすればいい話やない? 拒否らんかっても無視すればいい話。“誰?”とか聞いたりして、ことをややこしくするよりは、そっちのほうが楽やんね」

「……そうかもやけど」

「でも、ミツルくんは2回とも電話には出てるんよな。面倒くさいやり取りを、2回ともやってる」

「けど多重人格ってのはないと思う」

「うん、そんなレアな人はそうそうおらんやろな。あと、隣に女の子がいるっていうのもちゃうと思う」

「なんで?」

「日課になってたわけやん、マイちゃんがその時間に電話してくるっていうのは。……隣に女の子がおって、マイちゃんの存在を知られたくないなら、普通はケータイの電源を切って、かかってくること自体を避けるはず」

「……どうやろ」

シイちゃんの話は、確かにそうかもって思ってしまうけど、結局はこっちが勝手に立てた仮説。

実際はどうやったんかなんて、ミツルに聞かなわからんことやし、素直にうなずけんかった。

「だから、私はさっき“なんでそんな態度をとったんやろ?”って言うたんよ」

「……やっぱり怒ってるってことなんちゃうん」

「うーん。“怒ってる”……怒ってるのかなぁ? なんか、そうじゃないような気がするんよねぇ」

シイちゃんは違う気がするって言うけど、私には怒ってる以外の想像はできんかった。

だって、私は待ってる人がおるのに、その話をせんと、毎日夜中に迎えにこさせて、遊園地まで送ってもらってたんやから。
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