都合のいいオトコ
その後、ミツルもすぐに戻ってたみたいやけど、こっちの席には寄ってこんかった。
ビンゴ大会のときに1回だけ目が合ったけど、私はすぐ目をそらしたし、ミツルもシューくんらとずっとおったから、女を引っかけるのはあきらめたんやなと思ってた。
──そう安心しとったから、二次会が終わった後の私はなんの警戒もしてなくて。
店の前でユミちゃんたち夫婦と写真を撮った後、タクシーに乗ったナギを見送る。
私は歩いて帰れる距離でひとり暮らしをしてたから、結構、最後の方まで残ってて、彼氏が迎えに来るっていうハナとも立ち話をしててんけど。
そのハナもおらんなって、そろそろ帰るかと歩き始めたとき、まだ残ってる人らの中からひとりの男がこっちへと近づいてきた。
「……あげるって言うたのに」
差し出されたライター。
私はいらんって言いながらも、返されるそれを受け取ろうとする。
けど──
「番号教えて?」
ミツルの手はライターを放そうとせえへん。
互いにライターの端っこを掴んだ状態で、私たちは目を合わす。
「……ケータイ持ってないから」
受け取るのをやめて手を離すと、ミツルは口もとをゆるめ、すぐさま私のカバンへと手を伸ばしてくる。
「あっ」
見えるとこに入ってたんやと思う。
一瞬でケータイを奪われてしまった。