都合のいいオトコ
顔をあげてエレベーターの動きを確認すると、ハライシさんと入れ違いに乗り込んだのか、エレベーターはもうこの階に到着する頃やった。
下手に動かず、迎えた方がいい。そう判断し、私もボーイに並んで3名が来店されるのを待ってたんやけど──
「……っ」
入ってきたのは、知ってる顔。
「ご来店ありがとうございます。3名様ですね。ご指名のほうは……?」
すぐさま、隣におったボーイが声をかけにいったけど、私は身動きが取れずにおった。
「あー、俺はおらんけどー。お前らする?」
「いや、特に」
「俺もせーへん」
以前、ミツルと一緒に来とった阪南の人らやった。
彼らは私に気づくことなく、店内へと歩いていく。
「……帰っていい?」
「あー、ちょっと待ってな」
バタバタしてるボーイに声をかけて、上がれるように頼んだ後、私は席についた3名を、フロアの隅から覗いた。
「……」
ミツルは来うへんかったみたい。
これまで、あの人らが来ようとしてるときは一緒におって、連絡もくれてたけど。
ケータイを見ても、何も来てなかった。
通話履歴を見ると、いつも上のほうにあったミツルの名前は、だいぶ下へと流れてる。
「ほんまに終わったんやな」と、再度、思い知らされる瞬間やった。