都合のいいオトコ
溢れ出す独占欲
なんでこんなとこにおるん。
店にはおらんかったのに。
あまりにも突然過ぎて、その疑問を声にすることが出来んかった。
あ然としてたら、ミツルは肩から手を離し、駅の方を見る。
「もう電車ないで」
「……」
なんで普通に話しかけてくるんやろう。
「放っといて」
電話で冷たくあしらわれたことを思い出した私は、平静に背を向けた。
「駅行っても電車ないって」
「わかってるよ、そんなこと」
「じゃあなんでそっち行くん」
「……歩いて帰んの」
だからなんでついてくるん。
ミツルの考えてることが全くわからん。
後をつけられながら、15メートルほど歩く。
でも、
「タクで帰れよ」
神経を逆なでするおせっかいな言葉に、思わず足を止めてしまった。
「……誰かわからんのやったら話しかけてこんといて」
一体、何がしたいん。誰って聞いてきたくせに。何度も何度もわからんふりしてたくせに。
きつく睨んでも、ミツルは表情をひとつも変えへん。
ふてぶてしい態度で
「一旦店に戻って、タク呼べよ」
と同じことを繰り返す。
突き放してきたと思えば、今度は心配するような振る舞い。コロコロ変わるミツルの態度に、頭がついていかん。
睨んだまま何も言えずにおると、彼は私から目をそらして遠くを見る。そして、小さな声でつぶやいた。「何かあってからじゃ遅いやろ」と。