都合のいいオトコ
「……」
横顔をじっと見上げてた。
ミツルの気分に振り回されててイライラするし、こないだの電話の対応にもすごいムカついてるけど……。
「ミツルはなんでここにおるん」
多分、私は今、ホッとしてる。
まだ終わってないんやないかって期待も、し始めてる。
駅下がりの広い道やのに、1台も車が通らへん。向こうの国道からは、微かに車の走る音が聞こえてくるけど。
静かなこの空間が、気持ちを徐々に落ち着かせてくれる。
「ツレがお前んとこ飲みに行ってるから、運転役で」
「……そうなんや」
つまり、ミツルは私に会わんように店にはこんかったってことか。避けてたんやな。
「なんで声かけたん」
避けてたなら、なんで?
聞きたかった。ミツルの本音、知りたかった。
でもミツルは──
「タク呼べば? 来るまでおったるから」
私と長く話すことを嫌がった。
「……」
ほんま、何がしたいん。
そうやって突き放すなら、声なんかかけるな。
「なんなん、ほんま」
イライラする。
「……っ、もういい」
イライラする、ホッとした自分にも。
そばを離れて、また歩き始めると、
「だから危ないって」
ミツルはそう言って、今度は腕を掴んでこようとする。
終わらせたいんか終わらせたくないんか、どっちなん。
私が腕を引いて、掴まれないようにすると、ミツルは大きなため息をついた。そして──
「面倒くさ」
独り言のようにそうボヤく。