都合のいいオトコ
そのうんざりした表情を目にした瞬間、私の中で、隠しておきたいと思ってた感情が一気に溢れた。
「っ、面倒くさいなら放っとけばいいやんか!」
どうせダメになる関係やって考えてても、離れていかれるのは嫌やった。
ひとりでおるのが辛かった。だから、ミツルがいてくれることに安心してた。
一緒におれば、マコトより好きになれるんやないか。そんなことを考える日もあって。
でも、好きやとまで思わん今は、付き合いたくない。アントを傷つけたとき、めっちゃ罪悪感があったから。
「あんたかって面倒くさいから! 私のこと切る気でおるんなら、ついてくんな!」
自分がずるいことをしてるのはわかってる。
口説かれたら逃げるくせに、関係を深めてからにしようとするミツルの作戦には気づかんふりして、甘えてた。
もう少し甘えたい。そう思っても、グイグイ来られたくないから、元カレを好きでいる自分を知ってもらおうとした。
ずるくて、ずるくて。自分のことしか考えてない女。
でも、やめれんかった。抜け出せるなら、抜け出したかったから。マコトをやめれるなら、やめたいと思ってたから。
「……」
叫んだ私を静かに見つめてくるミツルは、再び、深いため息をつき、ポツリとつぶやく。
「なんで泣くねん」
視界がゆらいでた。
溢れる涙がこぼれんよう、まばたきせずに睨み続けると、ミツルは後方からの賑やかな声に振り返る。