都合のいいオトコ
同じようにそっちを見ると、店のビルからお客さんらしき数人が出てきてた。
見られんようにするためか、ミツルは私の腕を掴み、大通りから離れようとする。
引っ張られてく私が、手を払いのけようとしても、その手には力が入っててビクともせえへん。
「放して」
話が中断されても、一緒におるのは気まずかった。
文句を言うてたのに、結局ついていく流れになってるのも嫌やった。
だから、すぐに離れようとしてたのに──
「もしもし? もう酒飲んでんの?」
ミツルは私の手を引きながら、誰かに電話をし始める。
「あー、ほんまけ。……や、飲んでへんならキー渡して、俺はタクで帰ろうって思っててんけど」
店におる友だちにかけてるみたいやった。
「おー、やっぱ帰るわ。……もう飲んでんやったら、車は乗ってってええ? それか代行使う?」
運転手役で来てたって話はほんまやったみたいで、ミツルは乗ってきた車をどっちで使うかで、友達と話し合ってた。
「……わかった。……おー、ごめんな」
空き地のフェンスに沿って、コンビニ方面へと歩いてた。話の内容からして、この後、ミツルが何をしようとしてるんかわかった私は、
「乗らへんで」
ミツルが電話を切ると同時に、そう告げた。
でも彼は、
「それやったらタクシー呼べ」
と、怒ってるような口ぶりで返してくる。